US移住とブートストラップ問題

USに移住して4か月経った

入社直後から希望していたUS移籍を会社にサポートしていただき、去年の9/21にビザつきの状態で入国して、その後出張で出国は挟みつつもシリコンバレーで生活し始めてかれこれ4か月経った。 移住後の最初の2か月は右も左もわからず大変だったが、色々な人に助けられて今では落ちついて暮らせる状態になった。

自分用のメモを兼ねつつ、運が良ければ識者から知見が集まるよう、僕がどこで困ったか本記事に書いておく。US移住に興味がある人の参考にもなると思う。これはUSだとスーパーでかなり安く手に入る Ribeye ステーキ。

US生活ブートストラップ問題

クレジットヒストリ

USではクレジットカードやローンの利用履歴などに応じてクレジットヒストリーが付き、何かを契約する際そのスコアに応じて審査が行なわれる。クレヒスがないとクレカ、ローン、ネット、携帯、テレビ、家など様々なものの審査が降りない。つまりクレヒスがないとUSで生活することが困難になる。

問題は日本のクレカやローンの履歴は一般にUSのクレヒスにカウントされていないのでクレヒスが無の状態からどうにかクレヒスを付けないといけないことなのだが、クレヒスがないとクレカやローンの審査が降りないので一見すると詰んでいる。

おそらく一番有名な解決策はANA / JALカードを使うことで、どうやらこれは日本にいても申請できる*1クレカなのにUSのクレヒスが貯まるらしい*2*3。これから移住を予定している人は 今から使い始めておくと 移住の少し前 *4 に発行しておくと楽かも。ただ、一度移住を終えて不要になっても解約するとクレジットスコアが下がるので解約しづらい問題もある模様。

もう一つは、クレヒスがなくてもクレカを作らせてくれると評判の銀行 (Bank of Americaなど) に地道にクレカの申請を投げまくり*5、失敗した場合は最終手段として、あらかじめある程度金をいれておくかわりに審査がゆるいSecured Credit Cardを作るというのがある。僕は最初に2種類のクレカの申請をしたら両方弾かれたのでSecured Credit Cardを申請しかけたけど、並行して最初の2種類を再度申請していたのが片方通ったのでSecuredの奴はキャンセルした。なお枠が約15万円分とかになってしまう (今もそう) のでこの手段はあまりおすすめできない。

住所とSocial Security Number

SSN (Social Security Number) というのは日本でいうマイナンバーで、身分証明にはこの番号かこの下4ケタがよく使われる。会社、銀行、保険、家などを契約する時にはこの番号がないといけない。

SSNの申請する際身元を確認する必要があるためUSの住所が必要なのだが、その住所のために家を借りようとするとSSNが求められる。また、銀行口座かクレカがないと家は借りられないが、それらを申請しようとしてもSSNが求められる。完全に終わっている。

会社から手配されたコンサルの人にはSSNの申請フォームに会社の住所を書いておけと言われたので僕はそうしてSSNを発行した。が、my Social Securityのサイトとかを見ると住所は会社のオフィスにしてはならないみたいなのが書いてあるので多分正攻法ではなさそうだし、うっかりホテルなどで仮の住所を設定してそこに到着が遅れたらそこから出れなくなるか、最悪追い出されると身元を他の人に奪われる可能性もあるので、なんとも言えない。

これによってマンションを抑える時はSSNを持っていたけど、銀行とクレカの申請の時は、「さっき申請してきたからSSN届いたら提出するよ」で通った。申請する時に申請したレシートが貰えるのでそれで証明もできると思う。

車と運転免許

運転免許がないとレンタカーは借りられないし車も買うことができないが、運転免許の試験には自分の車を持っていく必要があり、その車の情報が免許に登録される。一体どうすればいいというのか。

日本の運転免許を既に持っている場合に限るが、これは日本で国際免許を発行しておくことでどうにかできる。日本の運転免許を持ってるなら、神田に行くと数分で国際免許が発行できる。これを持っていると、1年の有効期限の間、旅行で滞在している人はアメリカでも運転して良いことになっている。

ただし注意が必要なのは国際免許が基本的には旅行者向けのもので、州によっては居住者はルールが異なる点である。カリフォルニアでは、居住者になって10日以内にカリフォルニア運転免許に申請しなければならないと明記されており、これを最も保守的に読むと、マンションを借りるかSSNに住所を登録した日から10日までしか国際免許が使えないという話になる。*6 カリフォルニア運転免許を取るにはDMVというところで筆記試験と運転試験に通る必要があるのだが、運転試験の予約が10日で取れることはまずない (普通は取れても2〜3か月先の予約) ので、その間Uber / Lyftで繋ぐか、どうにかResidentでない状態を維持して国際免許で運転するかの2択になる *7 。なおシリコンバレー近辺で車なしで生活するのは無理である。

いずれにせよ、国際免許でレンタカーは借りられるし、日本人がディーラーをやっているガリバーUSAとかに行くと国際免許でも車が買えるので、それほど問題にならない。車を買う時に保険加入が必須で、その時も免許を求められるが、国際免許の情報で加入できた。

就労ビザ医療保険

医療保険に加入する際、SSNの提出が求められる。しかし、就労可能なビザでないと普通はSSNの申請ができないので、家族を医療保険に加入させる時に困ることがある。SSNを持てない人はかわりにITIN (Individual Tax Identification Number) を出すように書かれていたが、ITINの申請にはtax returnが必要で、移住直後にそんなものはまだ出していないのでSSNもITINもない家族が存在し得ることになる。

これが一番困った。加入の際に社の福利厚生サポートに電話した結果、適当な番号を埋めるよう言われそれで加入できたのだが、2019年の税金に関するフォームを医療保険の会社が作る際に再びSSNかITINの提出が求められた。ITINの申請について理解している同僚やHRがいなかったため3か月くらい特に解もなく困っていた。

結果的には、日本の確定申告のサポートのために手配された会社に質問し、そこのUS支社の人から「10月から住み始めたならまだnon-residentなのでITINはなくてもよく、次の時のtax returnの際に申請すればよい」といった旨の回答をいただいた。その年のUS滞在が180日以上じゃなければあまり気にする必要はないらしい。医療保険の方も、電話してみたらSSN or ITINは空でフォームを提出してくれと言われて、とりあえず2019年分はそれでどうにかなった。ITINは税金の話なので、HRではなく税金のプロに相談しないと問題が解決しないという学びも得られた。

US移住に関する雑多な知見

ブートストラップ感のあった問題は上記の通りだけど、その他にも4か月の間で得られた知見がいろいろとあるので適当に放流しておく。

日本食もある程度は食べられる

アメリカに旅行に来ると大体ステーキとかハンバーガーとかパンケーキを食べがちなのでそういう食事をするイメージがあった。ステーキとハンバーガーは実際結構食べてる気もするけど、毎日それだけというわけにもいかず、やはり普段日本食を食べられるに越したことはないという気持ちになる。特にこちらで普通に飲食店に入った時の米のクオリティが結構厳しい感じがする。

日本の食べ物を売っているスーパーがこの辺には三種類 (ミツワ、マルカイ、ニジヤ) あり、そこに行くとまあ日本で食べられるようなものが調達できる。そうじゃなくても近所のスーパーに日本食コーナーが割と広めに設置されていたりする。割と普通の値段で納豆が食べらるし、日本米も売っている。ステーキを食べる時も個人的には日本風の味付けの方が好みなので、Mr. Yoshida's Original Sweet Teriyaki ソース を買ったりしている。

外食だと、寿司とラーメンが無限にあるのは御存じかと思うが、東京でも割とおいしい部類のラーメン屋もあったり、まだ行ってないけど二郎系ラーメンもあったりする。この辺だと牛角吉野家やよい軒一風堂、Pepper Lunch *8 など*9の日本のチェーン店もある。

日本のテレビはあまり見れない

番組やってる国に限らずまあそもそもそんなにテレビ見ないんだけど、年末年始にちょっと特番を見たい気分になることもある。Comcastでケーブルテレビを契約しているが、そこに追加でお金を払うとテレビジャパンというのが見れるものの、これはNHKがやっている奴なので基本的にはNHKの番組が中心で、他局のが見たくてもないことの方が多い感じになる。日本のどこかの家にチューナーつきのサーバーを置いてくる人もいるけど、僕はそれが難しい状況だった。

あとはネットの動画サービス頼みという感じになる。日本ではAmazon Prime Videoを使ってたけどこっちではNetflixを見ている。日本っぽいコンテンツでも何故かUSでだけ配信されてたり、USっぽいコンテンツでも何故か日本でだけ配信されているといった不思議な状況がある。

シリコンバレーの家賃は想像ほど高くないかもしれない

前回の記事にも微妙に書いたけど、僕が懸念していたほど家賃が高くならなかった。 chibicodeさんが#地獄のサンフランシスコという話をしていたことがあり、2015年当時サンフランシスコは1ベッドルームで家賃の中央値が $3,530 であり、それが年に1〜2割上昇しているみたいな情報を目にした。マウンテンビューにいる同僚も大体そのくらいの家賃で住んでいると聞いていたので、自分の家賃もそのくらいすると思っていた。

が、シリコンバレーというのはサンフランシスコより割と南の方を指していて、Capital of Silicon Valleyを自称するSan Joseはそのスライドでも中央値が $2,220 なのである。この2つは全然額が違うと思うし、多分今の家賃もそこからめちゃくちゃ乖離しているわけでもない気がする。最近だとこういう話もある。そして既に子供がいる同僚と違い、まだ1ベッドルームで問題ない。前の記事の繰り返しだけど、アメリカの1ベッドルームは少なくとも2人なら十分暮らせる面積がある。

まあしかし家賃が安いところは大体治安が悪いか学区が良くないので安いというケースが多いので、お金は必要である。

病院では通訳がつけられる

医療系の用語は難しいし、妻が病院に通う際英語の通訳が必要になったのだけど、話で聞くところによると大体病院が通訳を用意していないといけないことになっているらしく、なんか部屋のスピーカーで通話越しに通訳が入れてもらえるということを学んだ。これは病院に電話する時も使える。まだあまり英語が得意でない家族が一大事の時でも安心できる。予約さえ取れれば、日本語が喋れるドクターもいる。

ビザつき初入国は審査が厳しい

重要な書類が入った本棚を航空便で別送しながらビザで初入国しようとしたところ、ビザ申請時に使った書類を見せないと入国を許可しないぞと言われた。普通に移民弁護士にも持ってくようメールで言われてたので不注意だった。SSNの申請を済ませたかった関係上どうしてもビザのステータスで入国したかったので「頼むよ〜」と言っていたら「次は持ってくるんだぞ」みたいな感じで通してもらえた。実際には2回目はビザスタンプだけで通してもらえた…

荷物の航空便はすぐ着くとは限らない

航空便なら2週間くらいで届くと言われていた荷物が1か月くらい届かなかった。割とすぐ届くだろうと期待していろいろ航空便で送っていたので、それが届くまで元から家具のある仮アパートから自分たちで抑えた部屋への引っ越しがなかなかできず、大分ストレスが貯まった。これから移住する人は、これだけあれば最低限暮らせるだろう、というレベルの荷物は手荷物で持っていくのが良いと思う。

永住権の申請は可能なら早めに始めたい

普通、ビザは3年くらい経ったら更新手続きが必要になるが、先にグリーンカードの手続きを終わらせてしまえばペーパーワークに使う時間が減って効率的な感じがする。 が、グリーンカードの書類の準備を始めてから受け取れるまでに2〜3年はかかるのが普通なので、入国してからすぐ手続きを始めないとその目論み通りいかない感じになる。直前に移住していた同僚もすぐにプロセスを始めていたと聞いて、僕も申請したい旨をHRの人に伝えたところ割とすぐ手配していただけた。まだ書類集めの最中だけど。

その他

他にも以下のようなことを書きたかったけど、記事が長くなりすぎるのでここでは短くまとめ、もし詳細に興味がある方がいればメンションなどしていただきたい。

  • Armが大企業なので移住のサポートが手厚く、便利だった
  • 企業型確定拠出年金の解約は原則退職時なのでUS移住と同時になってしまい、個人型への移管が面倒だった
  • ビザ申請者の年収は公開情報になっている
  • シャワーヘッド交換すると便利、あと多分浴槽は自分でカーテンかけるより最初からガラスの仕切りがついてる部屋の方が快適そう
  • 車は馬力がないと高速道路の運転に困りそうだと思ったが、割と皆それほど高くない車で生活している。駐車場が狭くて車を早速ぶつけてしまったので、運転が久々という人は一台目はなるべく安い車にしておくのがよさそう
  • 何とは言わないけど、VPNサーバーを立てるならIPv4だけじゃなくてIPv6もトンネルを通るようにしないと期待通り動かないことがある。
  • 大抵のマンションの敷地にはジムとBBQ場とプールがあるっぽくて面白い。うちはテニスコートもある。
  • 何年か前から維持してたSIMのタイムゾーンが違う地域の電話番号を使い続けてると早朝にスパムコールが来たが、この辺の地域の番号に変えたら変な時間にかかってこないかわりに量がかなり増えてしまった
  • 移住前後はUnion Bankを開設し、Transfer Wiseで最小限の円を送金した。Union Bankはもう解約した
  • こちらの銀行は定期預金とかでなくとも金利が年1.8%くらいのが普通にあるらしいのでそのうち開設したい
  • 鍵を使ってゲートを通らないと敷地に入れないようになっている方が玄関に変な勧誘が来にくくて便利らしいが、実際にはマンションの変な住人がやってくるので民度が重要
  • SSNに登録されている住所をオンラインで変更するにはmy Social Securityというサイトを使うが、2度もロックを解除してもらってリトライしたがアカウント作成に失敗した。他の人からもこれのアカウントを作れると聞いた試しがない

*1:日本向けのカードでヒストリがUSと共有されるわけではなく、日本のヒストリーを参照してUSのカードが発行できるという話らしい https://twitter.com/frsyuki/status/1219425958081384448

*2:僕が他の人から名前を聞いた時にはもうクレカを持っていたので申請しなかったけど、Premioというカードでもいけるそう https://twitter.com/suztomo/status/1219259746122899456

*3:Amexも日本のカードがあると移行できるらしい https://twitter.com/jmuk/status/1219332788152725504

*4:例えばANA CARD USAは渡米90日前から申し込み可能とのこと

*5:この時、オファーレターやpay stubなど、収入を証明する書類が信用の根拠になる。また、同時に銀行を申請している場合は、最初に銀行にいくら入金したかが見られているように感じたが、後者は気のせいかもしれない。

*6:が、Residencyがestablishされる条件は正確にはもっとゆるい可能性があると思う

*7:記事投稿時点では無意識に選択肢から外してたけど、仮免はDMVに早朝に並ぶなどするとすぐ取れて、かつ隣に免許持っている人を乗せると運転できるようになる。その同乗者は運転試験の時は必ず必要だけど、それまで生活している間いつも同乗してくれる人を見つけるのはなかなか大変そう。

*8:いきなりステーキ系列のいきなりステーキじゃない奴

*9:記事投稿後、リンガーハットもあるというリプライをいただいた