エンジニアが給料を12倍にする方法

はてブの人気エントリーに日本のエンジニア達は海外に出なければいけないという記事があった。 カナダ在住で経験年数4年のソフトウェアエンジニアで年収1600万円の方らしく、 日本より海外の方がソフトウェアエンジニアの給料が一般に高いので海外に行くべきという話が書かれている。

実際僕も居住地域による給与差を利用すべく渡米し、先月の記事 では新卒から数えて8年で年収が12倍になっていた話も紹介した。 一方、年収1600万円であれば海外に出なくても稼げると思っているので、 国内にいてもできそうなものも含め、ソフトウェアエンジニアとして給料を上げる上で過去に活用したハックを紹介していきたい。

昇給履歴

新卒入社

僕が新卒で入社した会社の当時の初年度給与は450万円だった (公開情報)。 大学の4年間はずっとアルバイトとしてソフトウェアエンジニアをやっていて、 3社を渡り歩いて時給は800〜1350円という感じだったが、それに比べると正社員というのはすごい額の給料がもらえる。 経験年数というのはビザの取得とかにも影響してきたりするので、正社員にはさっさとなってしまうのが良い。

外資転職

新卒社員として1年11か月働いた後、外資の会社に転職した。 東京のエンジニアポジションだと、この会社の最低年俸は800万円とかである (公開情報)。 新卒2年目の間に年収800万円に達していたら昇給RTAとしてはまあまあという感じがする。

転職の前に転職ドラフトに参加していたのだが、 ありがたいことに外資ではなくともこれくらいの額の指名が結構いただけ、 1000万円で指名していただけた会社もあり、そのあたりを根拠にこの転職での給与を交渉した。

外資なら、日本にいて年収2000万円の人もざらにいるので、 年収1600万円は外資であれば日本でも割と有り得る話だと思う。

買収

僕はこの会社にシリーズCの資金調達直後に入社したのだが、その1年後に会社が買収された。 この時社員からミリオネア (つまり1億円もらった人) が50人以上生まれたらしい (公開情報) のだが、多分僕もそれにカウントされてそうな程度にはお金をいただいた。 この額がどう支払われたかは公開情報ではないが、買収後は4年間在籍してるわけで、 4年で1億円以上もらえてる場合の年収は…まあそういうことだ。

有望そうなスタートアップを見つけたらなるべく早いうちに入っておくと、 日本でも一発で大金を得られるチャンスになるかもしれない。

渡米

買収で得られる収入はボーナスのようなもので、基本給にあたる部分は東京のエンジニアらしい推移を続けていたが、 渡米した段階で年収が増えて $151,491 になった (公開情報)。 当時の為替で1600万円。アメリカの就労ビザであるH-1Bビザを申請する時、 給与は最低このくらいないといけないというガイドラインがあって、 僕の地域のSenior Software Engineerの当時のPrevailing Wageがこれであったと記憶している。 なので、シニアエンジニアがH-1BでSFベイエリアに渡米すると、最低でもこの年収はもらえることになる。 今の為替だと2200万円になる。

僕の経験上、どこの会社でも従業員の現在の住所に従って給与には傾斜がかかる。 例えアメリカの会社に勤めていても、 例の記事の人のようにカナダ在住であればアメリカのNYやSFから勤めるのに比べたら給与は劣るはずだし、 日本からだとそれより更に低くなる。 逆に僕はカナダの会社にSFベイエリアから勤務しているが、多分カナダの本社周辺の人たちより良い傾斜がかかっている。

つまりニューヨークかサンフランシスコに住みましょうという話になるのだが、 どっちも治安は最悪である。その点、サンフランシスコから少し南のシリコンバレーのあたりは、 田舎なので治安が少しマシで、給料はサンフランシスコより若干劣る程度で、日本食も豊富なのもあり、 いいバランスだなと思ってそこに住んでいる。

昇進

外資だと、マネージャーにならなくてもIndividual Contributorとしてそこそこ昇進し続けられるのが普通である。 Senior, Staff, Principal, Distinguished あたりが割とメジャーなタイトルで、 タイトルがインフレすると間にSenior StaffとかSenior Principalが挟まってくる。 目の前のタスクに集中するのではなく、多くのチームをまたいだデザインやリードをやるようにしていると、 タイトルが上がる。

これらのタイトルはそれぞれ役割が異なるので、単に別の仕事として位置づけて給与に連動させない会社もあるが、 まあ普通はジョブタイトルごとに給与のレンジがあり、それはlevels.fyiを眺めればすぐにわかる。 なので、なるべくビジネスインパクトの大きいタイトルにポジションチェンジを続けると、ついでに給与も上がる。

この会社では僕はStaffまで昇進した。 その際の給与交渉の額の参考にするために他の会社のリクルーターと話したりしていたが、 このタイトルでのSFベイエリアでのスタートアップの基本給の相場は $180,000 みたいな感じだった。 今の為替で2700万円。

大企業転職

この会社で2度目のEXITチャンスが見えてきて、 僕は2億円欲しいと公言していた。 これは在籍し続ければ実現する可能性は十分にあったが、 コンパイラが書きたくなったので転職した。 それができる会社がたまたま社員1万人だっただけなのだが、 スタートアップから一転、上場済みの大企業に移ることとなった。

スタートアップだと一発当てない限りは前述の $180,000 からそれほど年収が増えないイメージだが、 大企業だと2億円みたいな夢はないかわりに、安定して高い年収が得られる。 例えばAmazonのSeniorにあたるポジションは年収 $360,300 くらいらしい (ソース: levels.fyi) ので、大体倍くらいになるということ。 ちなみにこのポジションはリクルーターに話しかけられて受けたのだが、もらったオファーも実際そのくらいの額だった。 実際にはこのオファーは蹴ったわけだが、今の為替だと5400万円で、新卒の450万円の12倍ということになる。 円安じゃなかったとしても8倍はある。

こういった相場感を適切に調べておき、複数の企業からオファーをもらっておくと、 このくらいの額がもらえるような交渉ができる。

この辺は日本にいても当てはまる話で、例えばGoogleでSeniorまで昇進できた場合、 日本オフィスでも $265,266 (4000万円) とかもらえるようだ (ソース: levels.fyi)。

Q&A

お金に執着しすぎでは?

そう思う人は多分お金に困ったことがないのだろう。 学生時代に貯金を全て親の借金の返済に使われ、 大学院進学を経済的理由により諦めたといった経験から、 貧乏に対して常に強い不安を感じ続けている。 実家は家のローンの返済に苦労しているが、 自分の家族は家も教育も不自由なく得られるようにしたい。

起業した方が稼げるのでは?

それがそんな簡単に上手くいくかはおいておいて、 僕はやっぱりコンパイラが書きたいというのが最初にあって、 経営ではなくコードを書くのに集中できるロールのままお金もいっぱいもらえる状況を望んでいる。

海外だと物価も高いのでは?

これはよくあるエアプコメントだと思う。例えば給料と出費が両方4倍になる時、手元に残るお金も4倍になることになる。 実際には、給料が12倍になった期間、例えば家賃はせいぜい4~5倍にしかなってないので、もっと残る。 僕の場合は老後は日本に帰るつもりなので、その残ったお金は低い物価の国で消費することになる。 もっと話を単純にすると、これくらい収入があると1年で数千万資産が増えるのだが、 日本にいたらそもそも額面で数千万受け取るのが大変だと思う。

海外だとレイオフされるのでは?

ビザの状況によっては割と深刻な問題だと思う。 僕の場合はもうグリーンカードを持っているのでそこは安心。これを書いた次の日にレイオフされるみたいなリスクはあるが、 普通は数ヶ月分給料がもらえるし、その間にまともな転職ができそうな程度にはリクルーティングメールは来続けてるので、 少なくとも金銭的な心配はない。個人的にレイオフされたら困るのは、自分がやりたい仕事ができなくなることくらいである。

まとめ

海外に住むと、日本語は使えないし、趣味や食事や医療などの選択肢や治安などが変わってくる。 家庭がある場合は家族にも影響がある。

「日本のエンジニア達は海外に出なければいけない」と結論づける前に、 海外に行くことで得られる給料が本当にその変化に見合うものなのか、 またそれは日本では達成できないものなのか考えておくと今後のためになる。