アメリカのビザ取得からグリーンカード申請まで

先週、会社のサポートによりアメリカのグリーンカード申請の最後のステージの提出が終わり、それが処理されるのを待った後少し事務手続をこなすとグリーンカードがもらえる状態まで来た。アメリカ移住に興味があるけど大変そうと思ってる人や、どの程度学歴が求められるか不安な人の参考になるよう、忘れないうちに全体のプロセスについてざっとまとめておく。*1

Diversity Visa

移民多様化ビザ。まず一番敷居が低い申請方法として、Diversity Visa Lottery (DV Lottery)というのがある。これは申し込むと抽選で誰でもグリーンカードが当たるという奴で、私もビザで渡米する前に2回挑戦し、両方外した。

申請条件

以下の2つを満たす必要がある。(詳細)

  1. 出生国がアメリカへの移民率が低い国であること (日本はok)
  2. 高校卒業か、最低2年の研修や経験が必要な仕事を2年経験していること

これを読めている多くの人は申請資格を有しているのではないかと思う。会社にアメリカビザをサポートしてもらえる状況にはない人も、これに申し込んで祈ることはできる。

所要時間

10月上旬から11月上旬の間にインターネットで申し込みが完結し、結果は翌年5月上旬から9月末にかけてわかる。 用意する書類の中で面倒なのはせいぜい写真くらいしかない。写真の条件はやや厳しいので、アメリカビザ用写真に対応しているカメラ屋さんに行って写真を撮ってもらって電子データをもらっていた。会社でまともにビザとグリーンカードを申請するのに比べるとすごく手間が少ない印象がある。

当選確率

DV-2021は全世界で11,830,707人、日本は30,565人の申し込みで、全世界で132,404人、日本は532人当選したので、当選確率は 全世界で1.1%、日本は1.7% といった感じ。10回申し込んで一度も当たらなかった同僚もいたりする反面、実際当たってる人もインターネットでは見かける。

Non-immigrant Visa

非移民ビザ。DV Lotteryを当てる強運を持っていない限り、最初にアメリカに移住する時普通はこれを取得することになる。全て挙げるとたくさんあるのだが、ソフトウェアエンジニアが使ってると聞くようなものは限られてるので、それらについてまとめる。

H-1B

就労ビザ。転職が可能であるため人気のビザ。ただ、抽選が必要で、必ずしも取れるわけじゃないのが特徴。3年間有効で、3年延長できるので、計6年使えることになる。

申請条件

専門性の証明のために学歴か職歴が必要になる。ソフトウェアエンジニアの場合は、

  • 日本でCS学士以上か、何らかの学士+6年以上の職歴: 通常枠
  • アメリカでCS修士以上: Advanced Degree枠

所要時間

H-1Bは4/1から申し込みができ、抽選結果は5月くらいに出る。6月に会社が追加でお金を出すとPremium Processingができ、面接の後7月ころ審査結果が出て、9月末から10月頭くらいに入国できるのが最速。

ただ、移民に厳しいトランプ政権下では進みが遅い年があって、2018年の人が翌年4月の入国になったり、そこで米国企業から反対が上がって2019年の人は10月に入国できたりしたが、2020年はコロナもあって発給停止になったりしていた。バイデン政権下ではそのようなことは少ないと思うが、進みの速さは運の要素が強そう。

当選確率

通常枠の抽選は一般に3分の1 (33%) の確率で当たると言われており、外れた場合も、Advanced Degreeにあたる場合は再抽選で少し確率が上がる (トータル45%程度)。

L-1B

転職できないが、抽選に依存しないビザ。H-1Bに落ちた場合に備えて、H-1Bと一緒に申し込みの準備を進めてくれる会社もある。3年間有効で、2年延長できるので、計5年間使える。従業員が1000人いるなどの条件を満たす大きめの会社はL-1 Visa Blanket Petitionというのを使うことができ、これがあると速やかな移住が可能になるらしい。そのくらいのサイズの会社に買収されると、ある日突然そういうのが使えるようになったりする。

申請条件

その会社の米国外拠点で1年以上働いていることが必要。

E-2

投資家ビザ。5年間有効。Eビザを発行するためには、ビザを発給される人と同じ国籍の *2 、米国永住権を持たない人たちがその会社を所有している必要がある。つまり、自分が日本人である場合、会社の株式の半数以上をまだグリーンカードを持たない日本人だけで保有していればこれが使える。やや厳しい条件だが、H-1Bのかわりにこれが使われるのを見たことがないでもない。

申請条件

管理職、役員、あるいは専門知識や技能の持ち主であることが必要。

O-1

アーティストビザ。プロスポーツ選手とかノーベル賞取ったみたいなすごい人が使う奴。自分はソフトウェアエンジニアでいうところの大谷翔平だくらい自信がある人が取るのだと思うが、僕は学歴が学士卒*3であることからも最初から諦めていた。

申請条件

卓越した能力の保持者であることを証明する書類を提出する必要がある。海外で著名な人から推薦状をもらったみたいな話を聞く。基本的にはPhDを持ってる人が通してるイメージで、CS修士で通してる人もたまに見る。

F-1

学生ビザ。アメリカの大学を卒業後 OPT (Optional Practical Training) を使うと1年間働くことができ、その間に別のビザにスイッチするといった使われ方をするらしい。

Immigrant Visa

移民ビザ。永住権、グリーンカードのこと*4。通常は大きくわけて3ステージあり、PERM、I-140、I-485 (AOS) に分けられ、これらを終えると晴れてグリーンカード取得となる。なお、これらを全て終えるには大体2-3年 *5 かかり、かつ転職や職務変更などで振り出しに戻ることがあることを考えると、普通はビザ取得直後にグリーンカード申請の準備を始めるのが望ましいと思われる。

申請カテゴリ

申請者のレベルが高い順にEB-1、EB-2、EB-3 ... といった申請カテゴリがあり、EB-1だとPERMは不要になり、一般にプロセスが速くなる。

  • EB-1: O-1を取るような技能があったり、国際企業の管理職であったりすると該当
  • EB-2: 修士以上の学歴か、学士と5年以上の職歴で該当
  • EB-3: 学士以上の学歴が必要

私は申請を始めた時点で5年の職歴があったけど、書類を作り始めた時点ではギリギリ足りなかったので、EB-3になった。ただ、EB-2とEB-3は独立したキューであって、どちらも処理が詰まっていない (Visa Bulletinに C = Current が書いてある) 限りはどちらでも速度が変わらない。

PERM

書類の準備が一番面倒くさいステージ。過去に所属していた会社から職歴を証明してもらう書類を集めたりする必要がある。大学の教授に推薦状をもらうといったことをやっていた人も見た *6

書類を集めたあと、申請者の職務を記載したjob postingをして一定期間放置し、アメリカには該当する技能を持つ人がいないことを証明する必要があり、それに必要な書類を要求して送られてくるまでの期間も含めるとこれに結構時間がかかる。一方、Googleのような年中グリーンカード申請をしている会社ではなんかそれっぽいjob postingをプールしていて、グリーンカード申請者はその後のステップから開始できるという話も聞いた。

なお、PERMは職種に紐付くものであるため、転職するとやり直しで、転職しなくても職務内容が大きく変わった場合やり直しになる。

所要時間

PERMを提出できてから承認されるまでは通常4-6か月かかる。その提出に必要な書類の準備が順調に進めても半年くらいかかるので、実際には1年くらいここで使うことになる。

I-140

これは雇用主の審査で、企業が規定の給料を払う経済的能力があるかどうかが審査される。書類を書いて出して処理されるのを待つ以外のことはあまりない模様。なお、I-140と次のI-485は並行して進めることができる *7

所要時間

ここで見れるが、私のケースでは7.5-8か月程度かかる見込み。

I-485 (Adjustment of Status)

最終ステージ。実際のグリーンカード申請にあたる。戸籍抄本を日本から取り寄せたり、両親の出生地や生年月日や現住所を調べたりする必要がある。健康診断の結果を提出する必要があるのもここだが、処理を待つ間に失効してしまうので、申請時点では健康診断の結果は準備しない。あと指紋採取をしたりするらしい。なお、AOS (Adjustment of Status) は米国内で申請を行なう場合に使うやつで、在外米国大使館で面接を受けるConsular Processingというやり方もあるらしい。

所要時間

11-23か月程度かかる見込み。これがボトルネックぽい。

その他

グリーンカード取得に必ずしも必要なわけではないが、普通PERMの次のステージでI-140やI-485 (AOS) と同時に申し込まれるForm 2つを紹介する。

I-131: Advance Parole

グリーンカード申請中はアメリカを出国できないみたいな話を見かけることがあるが、これがそれにあたる。実際には、H-1B、L-1BなどのDual Intent Visaと呼ばれるものを持っている場合はグリーンカード申請中も出国・再入国できるのだが、このAdvance Paroleはそういったビザが失効してもグリーンカード申請中は再入国できるように申請するもの。なのであくまで保険なのだが、これをI-140やI-485と一緒に出した後承認される前に出国してしまうとAdvance Paroleの申請は無効になり、ややリスクが上がる。そのためこのステージにいる間はアメリカを出国せず過ごすのが望ましい。

所要時間

4.5-6.5か月程度かかる見込み。半年くらい海外出張や一時帰国をしない前提になりそう。

I-765: Employment Authorization

これもAdvance Paroleに似た保険にあたる奴で、グリーンカード申請中に働く許可を得るためのもの。

所要時間

1.5-6.5か月程度かかる見込み。

弊社について

私がビザやグリーンカードの申請をスムーズにできるよう移民弁護士のサポートを受けられているのは全面的に会社のおかげなので、弊社の宣伝をしたい。We're hiring! 面白い仕事がいっぱいある上に金銭的待遇が良いだけでなく、ビザのサポートも手厚い会社だと思う*8アメリカだけでなく、日本からカナダへの移住をした同僚も複数いる。

Jobs - Treasure Data

参考記事

僕が申請前にお世話になったり、申請後見かけたりした関連記事の中でパッと思い出したものを載せておく。

*1:なお、基本的にはまだ何も知らない人向けにゆるめに書いた文章であるため、実際に申請をする人は詳細は必ず移民弁護士に確認を取ること。

*2:この縛りがあることは @yusk_ さんにご共有いただきました https://twitter.com/yusk_/status/1426262331684626434

*3:いまでこそアメリカのCS修士に在学中だが、卒業はしていないので今でも使えなさそう

*4:厳密にはDiversity Visaも当然ながらこのカテゴリに入る気がするが、記事の流れの都合上この構成になってしまった上にいい感じの見出しが思いつかなかったのはご容赦いただきたい。

*5:EB-2およびEB-3を想定している。なお、現在はいくつかの国は申請キューが分かれており日本は比較的処理が速くてこれなのだが、今後それが撤廃されてもう少し遅くなるリスクがあることに注意されたい https://redbus2us.com/hr1044-bill-passed-in-senate-summary/ 。ただ、通った後一気になくなるわけではなく、徐々に適用割合が増えていく感じぽいので、まだ申請してない人がめちゃくちゃ急ぐ必要があるわけでもなさそう。

*6:私は移民弁護士が大学のレベルのようなものを審査する機関から書類を取り寄せていて、それと私のdiplomaとtranscriptがセットで必要書類が揃った感じになっており、私はこれはやらなかった

*7:同時申請にはリスクもあり、特にdual intent visaでない場合は、非移民ビザがI-485を出した瞬間原則失効するので避けた方が良いと @Yuryu さんにご共有いただきました https://twitter.com/Yuryu/status/1426279993122844674

*8:念のため書いておくと、入社していきなり移住というケースは少なくて、入社後に実績が認められ、移住することで会社側に何らかのメリットがある人が移住するということが多い。参考までに、僕は入社直後から移住したいと伝えていた結果、入社2年後にビザの手続が始められた。